ビットコインのソフトフォーク:スケーラビリティとプライバシーの向上

ビットコインのソフトフォーク:スケーラビリティとプライバシーの向上 仮想通貨の基礎知識

1.はじめに

ビットコインは、その革新的な技術と分散型の性質により、金融業界に大きな影響を与えています。しかし、ビットコインのスケーラビリティ問題やセキュリティ問題を解決するために、ソフトフォークという手法が用いられています。この記事では、ビットコインのソフトフォークとその具体的な例について解説します。

ソフトフォークとは?

ビットコインや他の仮想通貨にはそれぞれルールが設定されています。ソフトフォークとは、これらのルールを変更する際に使われる手法の一つです。

ソフトフォークは、仮想通貨そのものの仕様を変更するもので、ブロックチェーンの分岐自体は行われますが、すぐに収束するため、仮想通貨の永続的な分裂は起こりません。具体的には、暗号資産の問題点を解決したり、バグを修正したりするために、ルールや仕様を変更する際に発生するプロトコルの変更のことを指します。

ビットコインのソフトフォーク

ソフトフォークは、それまで利用されていたブロックチェーンと変更後(ソフトフォークが行われた後)のブロックチェーンとで互換性があります。そのため、変更前のチェーンで使われていた暗号資産がそのまま使用できます。

ソフトフォークの事例

過去に実施されたソフトフォークの事例としては、ビットコインにて実施されたPay to script hash(P2SH)への仕様変更、Segwit(Segregated Witness=署名の分離)への仕様変更、Taprootの実装などが有名です。

P2SHへの仕様変更

P2SH(Pay to Script Hash)は、ビットコインのトランザクションの柔軟性を向上させるためのソフトフォークです。P2SHは、トランザクションの受取人がスクリプトを満たすことで資金を受け取ることができるようにしました。これにより、マルチシグネチャトランザクションなど、より複雑なトランザクションが可能となりました。

マルチシグネチャーとは、ビットコインを決済や送付に使用する際に、複数人の署名が必要となる認証方法で、セキュリティ面が優れています。しかし、マルチシグネチャー方式でビットコインを送付する場合、複数の署名が必要なため送付側の手数料がかさむという問題がありました。

マルチシグネチャートランザクション

これは、通常の送付方法であるPay To Public Key Hash(P2PKH)では、1つの公開鍵に与えられたハッシュ値をアドレスとして指定して使用するため、マルチシグネチャーでは複数分の手数料が発生してしまいます。

しかしP2SHでは、送付指示(スクリプト)のハッシュ値をアドレスとして指定し使用することができるため、スクリプトに公開鍵のハッシュ値を検証するように指示することができ、マルチシグネチャーでありながら、従来の方法同様に簡単かつ安価に送付することができるようになりました。

SegWitへの仕様変更

SegWit(Segregated Witness)は、ビットコインのスケーラビリティ問題を解決するためのソフトフォークです。SegWitは、トランザクションの署名情報をブロックから分離することで、ブロックの容量を効果的に増やしました。これにより、ビットコインのトランザクション処理能力が向上しました。

SegWitでは、新しい形式のトランザクションが追加され、これらのトランザクションでは、scriptSig(unlocking scriptとも呼ばれています)に持っていた情報をwitnessという新たに追加した項目に移動します。これにより、以下のようなメリットがあります:

  • 意図しないトランザクション展性を不可能に:scriptSigを空にすることでtxidにunlocking scriptが含まれず、トランザクション展性の問題が解消します。
  • ブロックあたりに詰め込めるトランザクションが増える:witnessデータはブロックサイズの計算対象ではないので結果的にブロックに詰め込めるトランザクションの数が増えます。
  • 未署名なトランザクションのアウトプットが利用可能に:未署名でもtxidが確定するので、未署名なトランザクションのアウトプットを使って承認されうるトランザクションを作成可能です。

Txid(Transaction ID)は、ブロックチェーンネットワーク上の暗号通貨トランザクションに割り当てられる一意の識別子で、ステータスと確認を追跡するために使用されます。ビットコインなどの通貨は、送金などの取引がネット上にすべて残ります。送金して受け取ったときにトランザクションアドレスが生成されます。

SegWitが有効化されたあとでも従来通りの形式のトランザクションは利用可能です。

Taprootの実装

Taprootは、ビットコインのプライバシーとスマートコントラクトの機能を向上させるためのソフトフォークです。Taprootは、全てのトランザクションを一見同じに見せることで、プライバシーを向上させました。また、スマートコントラクトの実行をより効率的にしました。

Taprootは、新たなスクリプト言語であるTapscriptを組み合わせることで、ビットコインのスマートコントラクトで課題となっていたプライバシーが強化されます。

具体的には、Taprootは「シュノア署名」や「MAST(マークル化抽象構文木)」の導入を意味します。これにより、スケーラビリティとプライバシーの向上が期待されます。

シュノア署名では、マルチシグなどで使われる複数の署名を一つにまとめることが可能となり、スケーラビリティの向上による手数料の低減などが見込まれます。

一方、MASTは、複雑な条件を含むスマートコントラクトを効率的に記述することでデータサイズを削減します。通常、ブロックチェーンを使ったトランザクションには様々な情報が記述されています。その中には取引に必要のない情報も含まれています。MASTはこの必要のない情報をブロックに書き込まずにトランザクションデータを小さくできるのです。

Taprootの実装自体は完了したものの、ブロックチェーン全体に伝搬されるにはここから更に数年かかる見込みです。ビットコインネットワークを構築するノードやウォレットプロバイダーがサポートを開始する必要があります。

まとめ

ビットコインのソフトフォークは、ビットコインのスケーラビリティ、セキュリティ、プライバシー、そして機能性を向上させるための重要な手段です。これらのアップデートは、ビットコインが現代の金融システムに対抗するための重要な歩みを示しています。

ソフトフォークは暗号資産のアップデートを目的に行われますので、その多くは利便性が向上し、あるいはそれまでの問題を解決するため、市場においては好材料として受け入れられることがほとんどです。しかし、仕様が変更されるということは、それまでなかったバグが発生したり、新たな問題が発生したりしないとも限りません。ソフトフォーク直後は、しばらく暗号資産そのものが安定するまで様子を見ることも大切です。

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